Noble | 米国債ベースのプログラマブルUSDステーブルコイン

Noble 概要

Noble(ノーブル)は、インターブロックチェーン(IBC)エコシステムでの安定資産発行に特化したプラットフォームです。USDCなど主要ステーブルコインのネイティブ発行・流通を支えるハブとして機能しつつ、独自の利回り付与型ステーブルコイン「USDN(Noble Dollar)」を提供します。USDNは米国財務省短期国債によって102%超で担保され、約4.15%(執筆時点)の利息が発生するのが特徴です。この利息はホルダーやDeFiアプリケーションに還元可能で、「Composable Yield(組み合わせ可能な利回り)」という新コンセプトを体現しています。Nobleチェーン自体は1秒程度の高速ブロックタイムと低手数料を実現し、トランザクション手数料にもステーブルコインを利用可能な設計です。こうした特徴により、各アプリチェーンへワンクリックで安定資産を供給できる基盤となっています。

公式ドキュメントはこちら

1.簡単プロジェクト説明

Noble(ノーブル)とは何か?
Nobleは主にステーブルコイン(価格が米ドルなどに安定する暗号資産)の発行と流通に特化した独立型ブロックチェーンです。Cosmosエコシステム内の一つのアプリケーション特化チェーン(Appチェーン)であり、異なるブロックチェーンをつなぐIBCプロトコルを活用して、多くのチェーンへ安定資産を届けるハブの役割を果たします。簡単に言えば、Nobleは「ブロックチェーン間で使えるドルを発行・管理するネットワークです。

Noble上ではCircle社のUSDCなど既存のステーブルコイン資産の発行もサポートされています。しかしNobleが特徴的なのは、自前の新しいステーブルコイン「Noble Dollar (USDN)」を発行している点です。このUSDNは従来のステーブルコインと異なり利息(利回り)が付与される設計になっています。つまりUSDNを保有しているだけで、米国債から得られる利息収入が得られるようになっています。従来、米ドル連動型のステーブルコイン(例えばUSDTやUSDC)では、裏付け資産から生じる利息収入は発行主体が受け取っていました。Nobleはこの常識を覆し、ステーブルコイン利用者にも利息という価値を還元する仕組みを提供しています。

初心者にとってのメリット
Nobleの仕組みにより、ブロックチェーン初心者やユーザーはより安全で利便性の高い安定通貨を使うことができます。TerraのUST崩壊によりCosmos圏から大規模なUSD流動性が失われた過去があり、多くのアプリチェーン開発者やユーザーは安定した価値の資産を扱うのに苦労してきました。Nobleはこうした問題に対する解決策として生まれたプロジェクトであり、裏付けの確かな安定資産を各チェーンに供給することで、エコシステム全体に潤沢なドル流動性をもたらそうとしています。また、Nobleを介することで複雑なブリッジ操作がシンプルになり、ブロックチェーン技術を学びながら安全な通貨を扱える環境が整備されています。

2.ビジョン、特徴、強み

ビジョン(目指すもの)
Nobleのビジョンは、「アプリケーションチェーンの世界に安定した流動性をもたらし、誰もが使いやすいデジタルドル基盤を構築する」ことです。共同創業者でCEOのJelena Djuric氏は、TerraUSD崩壊後にCosmos圏の資金不足を目の当たりにし、「従来の安定資産ルーティングでは対応できない」と痛感しました。そこで、安定・安全・持続可能な資産発行プラットフォームを作ることを目指しました。

このビジョンに基づき、Nobleは以下の2原則を重視しています。

-①開発者の主権(Developer Sovereignty)
各アプリチェーン開発者が独自のブロックチェーンを構築しやすくするため、Nobleは安定した価値の基軸通貨を容易に導入できる環境を提供します。これにより、開発者は自チェーンのユーザー体験向上や独自機能に専念できるようになります。

-②優れたユーザー体験(UX)
Nobleは、ユーザーがチェーン間の資産移動をワンクリック操作で行えるような「ユニークなフォワーディングモデル」を採用。ブロック生成時間は約1秒、ネットワーク手数料も極小に抑えられ、さらに手数料支払いにステーブルコインが利用可能なため、ユーザーの負担が軽減されます。

Nobleの特徴と強み

-安定資産発行のハブ機能
Nobleは、Circle社のUSDCやOndo FinanceのUSDY、HashnoteのUSYC、MoneriumのEUReなど複数の安定資産の発行実績を持ちます。特に、Nobleの統合インターフェースにより、複数の法定通貨ステーブルコインを各チェーンへ供給できる点は大きな強みです。

-利回り付きステーブルコイン(USDN)
Nobleの最大の差別化要素は、新発行のステーブルコインNoble Dollar (USDN)です。USDNは、裏付け資産である米国債から生じる利息をホルダーに100%還元する仕組みが組み込まれており、年利約4.15%が見込まれています。これにより、単なる価値の保存だけでなく、利息収入を享受できる新たなステーブルコインモデルを実現しています。

-安全性と透明性
NobleのUSDNは、裏付け資産として米国財務省発行の超短期国債のみを保有。これら資産は倒産隔離された特別目的事業体(SPV)に保管され、毎日マーケット価格で評価されるため、不正や裏付け不足のリスクが低減されています。また、ガス代がUSDCなどで支払える点も、ユーザーにとって非常に利便性が高い設計です。

3.Nobleの仕組み

Cosmosにおける資産発行チェーンとしてのNoble
NobleはIBCプロトコルを活用して、発行したトークンを他のブロックチェーンへシームレスに転送します。たとえば、「Nobleチェーン上でUSDCをミント→Osmosisチェーン上のユーザーへ送金」という操作が、内部で自動的に処理されるため、ユーザーはシンプルな操作で異なるチェーン上の資産を利用できます。また、Nobleは約1秒という高速なブロック生成と、低手数料の運用により、効率的な資産管理を実現しています。さらに、NobleはCosmos HubのReplicated Securityを活用することで、独自のネイティブトークンを発行せずにネットワークの安全性を確保しています。

M^0プロトコルとUSDNの発行
NobleのUSDNは、新たな安定資産インフラであるM^0エムゼロ)上に構築されています。M^0は「安定コイン・ミドルウェア層」として機能し、発行パートナーが自社ブランドの安定コインをその上に構築可能にします。ユーザーや金融機関が米ドルを預けると、M^0はその資金を元に米国短期国債を購入し、対応する「$Mトークン」を発行します。Nobleはこのトークンを1:1で交換可能なUSDNとして提供し、米国債から生じる利息はスマートコントラクトを通じて自動的にユーザーに分配されます。これにより、発行体が個別に巨額の運用部門を持つ必要がなく、安定性とスケーラビリティを両立した仕組みとなっています。

4.解決する問題

Nobleは、マルチチェーン環境におけるステーブルコイン流動性の断絶と非効率という課題に取り組んでいます。Terra/USTの崩壊後、Cosmosエコシステムでは各チェーンが個別に安定資産を導入する必要があり、複雑なブリッジ操作や流動性の分散が問題となっていました。Nobleは、「発行体 ↔ Noble ↔ 各チェーン」というシンプルなルートを提供することで、ユーザーがどのチェーン上でも同一の安定資産を利用できる環境を整備し、効率的な資産移動と統一された流動性を実現します。

また、従来のステーブルコインは発行主体が裏付け資産から得た利息を独占する仕組みでしたが、Nobleはその利息をプロトコルレベルでホルダーに分配することで、エコシステム全体の持続可能性を向上させています。DeFiアプリケーションにおいても、この仕組みが新たな収益源となり、利用者と開発者双方にメリットを提供することが期待されます。

5.トークノミクス、資金調達、パートナーシップ、開発者情報、ロードマップ

トークノミクス(トークン経済)

Nobleチェーン自体には現在、ネイティブトークン(ガバナンスやステーキング用のトークン)は存在しません。これにより、Nobleチェーン上の経済圏は主にステーブルコインの流通とその利息に依存しています。ガス代はUSDCなどで支払われるため、ユーザーは追加のトークンを用意する必要がなく、シンプルな運用が可能です。また、ユーザーへのインセンティブ施策として「Noble Points(ポイント)」という仕組みが用意され、将来的なガバナンストークン配布や報酬システムに連動する可能性が示唆されています。

資金調達状況

Nobleは2024年11月にシリーズA資金調達を実施し、約1,500万ドルを調達しました。リード投資家には暗号資産特化ファンドのParadigmをはじめ、Polychain Capital、Foresight Ventures、Wintermute Ventures、Informal Systemsなどの出資者が参加。これらの投資を背景に、Nobleはプロダクト開発と自社ステーブルコイン(Noble Dollar)の立ち上げに注力しています。

パートナーシップ

Nobleは複数の安定資産発行体やブロックチェーンプロジェクトと連携しています。主なパートナーは以下の通りです。

  • Circle社: USDCの主要発行体として、Cosmos上でのネイティブUSDC発行に協力。Circleにとっても、Cosmos圏への公式ゲートウェイとして機能しています。
  • M^0: Noble Dollar (USDN)発行の基盤技術を提供。M^0は、他のプロジェクトでも利用される安定コインミドルウェアとして、既に複数のステーブルコイン発行に採用されています。
  • Wormhole: ブロックチェーン間ブリッジプロトコルを活用し、Cosmos外エコシステムへのUSDN転送を実現。EthereumやSolanaなど、IBC非対応チェーンへの橋渡しも計画中です。
  • Ondo Finance: 米国債利回りをトークン化するプロジェクトで、Noble上で発行されるUSDYというトークンを通じて、DeFi上で国債利回りを提供。
  • Hashnote: 利回り付きドル建てトークンUSYCの発行を予定。Nobleを通じて、ユーザーに複数の利回りドル資産の選択肢を提供します。
  • Monerium: 欧州拠点の電子マネー発行企業。ユーロ建てステーブルコインEUReをCosmosに導入し、外貨建て資産の拡充を図っています。

開発者情報(チーム)

Nobleは2023年に設立され、カナダ・トロントを拠点とするスタートアップです。主要メンバーは次の通りです。

  • Jelena Djuric(イェレナ・ジュリック) – 共同創業者兼CEO。Cosmos関連企業や政策提言団体での経験を持ち、Terra崩壊後の課題認識からNoble構想を主導。
  • Stefan Coolican(ステファン・クーリカン) – 共同創業者兼COO/CFO。上場暗号資産投資企業での経験と、伝統的金融業界での知見を活かし、財務とオペレーションを担当。
  • John Letey(ジョン・レティ) – 共同創業者兼CTO。Cosmos SDKを用いたブロックチェーン開発のエキスパートとして、技術面全般をリード。

アドバイザーには、Cosmosやモジュラーブロックチェーン領域の専門家が名を連ね、強固なネットワークの中でプロジェクト推進が行われています。

ロードマップ

  • 2023年3月: Nobleチェーンがメインネットをローンチ。コミュニティ向けにFRNZトークンのエアドロップを実施。
  • 2023年9月: Circle社との連携により、Cosmos上でのネイティブUSDC発行を開始。
  • 2023年11月: シリーズA資金調達(約1,500万ドル)を実施し、プロダクト開発とNoble Dollarの立ち上げを発表。
  • 2024年初頭: EUReやUSDYなど、他の安定資産の導入を開始。IBC経由の流通額が増加。
  • 2024年3月: Noble Dollar (USDN)のローンチ。M^0との提携により、利息付きステーブルコインを発行開始。あわせて、ユーザー向けのポイントプログラムを開始。
  • 2024年下期予定: IBCの大型アップグレード対応により、非Cosmosチェーンへの接続強化。Wormholeブリッジ統合や、Ethereumなど既存メジャーチェーンへのUSDN供給を計画。
  • 今後: 新規安定資産の統合や、Nobleチェーン自体のガバナンストークン発行、コミュニティ主導の運営への展開など、エコシステム全体の発展を目指すロードマップが進行中。

エアドロップ情報

Nobleは、コミュニティ向けのエアドロップ施策やユーザーインセンティブを積極的に展開しています。

FRNZトークン・エアドロップ (2023年)

Nobleはメインネット立ち上げ時に、コミュニティへの感謝と発行機能のお披露目を兼ねてFRNZ(Frienzies)トークンの配布キャンペーンを実施しました。FRNZは、Nobleが発行したユニークなトークンであり、1トークンにつきNoble特製の実物の記念品(友情ブレスレット)と交換可能な仕組みでした。具体的には、一定のUSDC保有者を対象に、スナップショット後に自動的にNobleチェーン上のアドレスへ配布され、後に特設サイトで交換申請が可能となる形で実施されました。なお、FRNZはガバナンストークンではなく、あくまで記念品引換券として運用されました。

Noble Points プログラム (2025年〜)

現在展開中のNoble Pointsプログラムは、USDNの利用者に対してポイントを付与し、将来的な報酬と交換可能にする仕組みです。ポイント獲得方法は、USDNを専用の「ステーキング・ボールト」にロックすることにより、期間と金額に応じてポイントが蓄積される仕組みです。長期間預けることで、ボーナス倍率が適用されるため、より高いポイントを得ることが可能となっています。一方、利息を享受したいユーザー向けには「フレキシブル・ボールト」が用意され、基本利回りに加えてボーナス利回りが付与される仕組みとなっています。獲得したポイントは、プログラム終了時にまとめて付与され、将来的なガバナンストークン配布やその他報酬と交換できる可能性があります。これにより、エアドロップとしての側面を持ちながら、ユーザー参加型のインセンティブ施策も実現されています。

USDNの利用に関する他のステーブルコインとの比較

NobleのUSDNは、裏付け資産から得られる利息をホルダーに還元する点が特徴です。ここでは、代表的なステーブルコインとの比較を示します。

ステーブルコイン発行方式・主体裏付け資産利息の扱い特徴・備考
USDN (Noble Dollar)Noble(分散型/M^0基盤)米国短期国債(102%超の過剰担保)ホルダーに100%利息還元(年約4%)Cosmos初の利息付きステーブル。IBCおよび他チェーンへの展開が可能。
USDC (Circle)Circle社(中央集権型)現金および短期国債(100%準備)ユーザーへの利息なし(利息収入はCircle社が取得)信頼性が高く、広く利用されるが、ユーザーへの直接還元はなし。
USDT (Tether)Tether社(中央集権型)現金・国債・社債・その他貸付等ユーザーへの利息なし(利息収入はTether社独占)時価総額最大のステーブルだが、透明性に課題が指摘されることもある。
DAI (MakerDAO)MakerDAO(分散型)仮想通貨担保+一部現実資産運用オプトインで利息獲得可(DSR経由で年利5〜8%)分散型ステーブルの代表例。利用者が自らDSRに預ける必要がある。
AUSD (Agora)Agora社(CeDeFi型)現金および現金同等物(国債含む)ホルダーやチェーンに利息分配(利回りあり)新興の利息付きステーブル。複数チェーンで発行・流通。
USD0 (Usual/M^0)Usual + M^0(分散型)米国短期国債(100%以上担保)ホルダーに利息還元(利回りあり)M^0基盤で発行された利息付きステーブル。大規模な存在感を示す。

解説:
NobleのUSDNは、中央集権型のUSDCやUSDTと異なり、裏付け資産の利息を直接ユーザーに分配する仕組みを持っています。DAIは分散型であり、ユーザーがDSRを利用して利息を得る仕組みですが、操作は自発的であり、利息還元は自動ではありません。一方、AUSDやUSD0は新興の利息付きステーブルコインとして、既存の枠組みに新たな選択肢を提供しています。USDNはCosmosネイティブかつM^0の技術により、よりシームレスでプログラム可能な利息配分が実現され、ユーザーにとって新たな価値提供モデルとなっています。

まとめ

NobleはCosmosエコシステムにもたらされた革新的な資産発行チェーンであり、利息付きステーブルコインUSDNによってブロックチェーンユーザーへ新たな価値を提供しています。安定資産の信頼性と利便性、さらにプロトコルレベルでの利息分配を通じたユーザー還元というモデルは、従来のUSDTやUSDCとは一線を画しています。また、エアドロップやポイントプログラムを通じ、ユーザー参加型のインセンティブ施策も展開しており、暗号資産中級者がブロックチェーン技術や新たな資産運用モデルを学び、実践するための絶好の機会となっています。Nobleの今後の動向と、マルチチェーン経済圏でのさらなる拡大に大いに注目する価値があるでしょう。

免責事項

  • 本記事は情報提供のために作成されたものであり、暗号資産や証券その他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的で使用されたり、あるいはそうした取引の勧誘とみなされたり、証券その他の金融商品に関する助言や推奨を構成したりすべきものではありません。
  • 本記事に掲載された情報や意見は、当社が信頼できると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性、完全性、目的適合性、最新性、真実性等を保証するものではありません。
  • 本記事上に掲載又は記載された一切の情報に起因し又は関連して生じた損害又は損失について、当社、筆者、その他の全ての関係者は一切の責任を負いません。暗号資産にはハッキングやその他リスクが伴いますので、ご自身で十分な調査を行った上でのご利用を推奨します。