株式トークンを24時間売買するArcus|手数料の実額と日本からの可否
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目次
Arcus(アーカス)は、米国株やETFの値動きに連動する株式トークンを、24時間365日いつでも手数料なしで売買できる取引所です。証券会社の口座は要らず、ウォレット1つで足ります。
2026年9月3日時点の実測では、現物の株式トークンに30日で約2億ドル・51万件超の約定が付いており、株を売買する場としての実需が立ち上がりつつあります。一方、もう1つの看板である無期限先物は、出来高の8割超が暗号資産で、株式の先物は1割弱にとどまります。
立ち上げたのはdYdX Labsで、Robinhood Cryptoが戦略出資者として加わっています。
Arcusとは|株式トークンを扱う24時間取引所
株式トークンの現物取引と無期限先物を、自己管理型ウォレット1つで扱える取引所です。Arcus自身のトークンは、まだ発行されていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| チェーン | Robinhood Chain(Robinhood発のイーサリアムL2・チェーンID 4663) |
| カテゴリ | 株式トークンの現物取引+株式や暗号資産の無期限先物 |
| ステージ | 2026年7月1日ローンチ(現物は対象地域なら誰でも使え、無期限先物は順番待ち制) |
| トークン | 未発行。発行の予定だけが公表され、時期も配分も未公表 |
| 資金調達 | Robinhood Cryptoが戦略出資(金額非公開) |
日本の証券口座で米国株を買う代わり、というのが主な使いどころです。口座開設も本人確認も要らず、週末でも日本時間の深夜でも売買でき、同じ口座で同じ銘柄のショートやレバレッジまで扱えます。
作っているのはdYdX Labsで、CEOは元MetaのプロダクトマネージャーだったEddie Zhang氏です。共同創業したPocket ProtectorがdYdX Labsに買収されたのを機に合流しました。
dYdX公式ブログは、分散化を突き詰めた前世代のdYdX v4について「性能とユーザー体験が犠牲になった。市場は明確に反応し、速さ・単純さ・流動性を優先した競合がシェアを奪った」と書いています。その反省を踏まえ、性能と流通経路を優先して設計し直したのがArcusです。
dYdX公式ブログは「dYdX LabsとRobinhood Cryptoが共同で構築した」と書き、Arcus公式ブログも「Robinhoodとのパートナーシップで構築した」と説明しています。ただし開発の分担も出資額も公表されていません。
画像:Arcusの公式トップページのスクリーンショット(2026年9月3日撮影)
株式トークンを24時間売買する場は成立しているか
実測を見る限り、成立しつつあります。現物の出来高は1日あたり約1,630万ドル、30日では約2億ドル・51万6,000件の約定が付いています。
※出来高は2026年9月3日時点の公式APIと公式インデクサから集計した数字です。
扱う銘柄は234件あり、大半を占める株式トークンはローンチ時の95件から179件へ増えました。ほかに指数やコモディティ、ミームトークンが少数並びます。
注文は、Arcusが自前の板で約定させるわけではありません。オンチェーンの自動マーケットメイカーの流動性と、プロのマーケットメイカーが出す確定気配の2系統があり、より有利に約定するほうへ注文が回されます。どちらが主でどちらが従かは、公式に規定されていません。
手数料は0%です。ただし公式の書き方は「ローンチ時点では無料」で、将来変わる可能性がはっきり示されています。負担がゼロになるわけでもありません。現物の実質的なコストは、約定時の提示レートと想定スリッページの形で発生します。
画像:Arcusアプリ(Spot / TSLA)のスクリーンショット(2026年9月3日撮影)
取引の中身も、1銘柄の投機に偏っていません。30日で出来高が付いた銘柄は227件あり、上位10銘柄を合わせても全体の33.2%です。カテゴリ別では89%が株式で、株を目当てに来ている利用者がいることは数字にも表れています。
買っているのは株ではなく、発行体への請求権
株式トークンを買って手にするのは、株式そのものの所有権ではなく、発行体に対する契約上の請求権です。議決権も付いてきません。
公式ドキュメントは「株式トークンはBitstampが発行する」「Arcusは取引の場であって発行体ではない」と明記しています。発行体のBitstamp Global Ltd.は英領ヴァージン諸島の法人で、準備金を規制下のカストディに預けています。準備金の中身は原資産の株式で、貸株に出している間は現金や現金同等物に置き換わります。
公式資料に「1対1」という記載は見当たらないため、裏付けの比率をそう言い切ることはできません。トークンの償還を求める先も、発行体が破綻したときに請求する先も、ArcusではなくBitstampです。
配当は現金で振り込まれるわけではありません。公式ヘルプは「配当の金銭的価値はトークンの裏付けとなる原資産へ再投資され、表示される残高がそれに応じて調整される」と説明しています。配当が付かないのではなく、現金では受け取れないということです。
議決権のほうは「パススルーされない」と明記されており、株主として議案に投票することはできません。
無期限先物もあるが、動いているのは暗号資産
無期限先物は64市場が上場し、58市場が実際に動いています。ただし出来高の84.7%は暗号資産の銘柄で、看板であるはずの株式の先物は7.9%にとどまります。
1日の出来高は約6,780万ドルと現物より大きいものの、BTC-USDの1市場だけで総額の63.1%を占めます。株式の先物は34市場ありますが、24時間の出来高は合計で約535万ドルです。株式のショートやレバレッジを目当てに来ると、思ったより薄い板に当たる可能性があります。
レバレッジの上限は市場ごとに違い、大半は10倍以下です。50倍を使えるのはS&P500連動ETFのSPYの1市場だけです。
原資産の市場が閉じている間は、取引の条件も切り替わります。64市場のうち42市場では閉場中の初期証拠金が1.5倍に引き上げられ、10倍の市場なら実質約7倍までしか建てられません。ファンディングレート(資金調達率)も市場連動から固定レート(SOFR+0.5%)に変わります。
価格は、前セッションの終値を軸にしたバンドの範囲に制限されます。バンドが1段広がるのは、片側への圧力が1時間続いたときです。価格が戻っても、そのセッション中はバンドは縮みません。
画像:Arcus公式ドキュメントより(2026年9月3日取得)
「24時間開いている」とはいえ、閉場中はポジションを建てにくくなります。
出来高や建玉の規模も、専業の無期限先物取引所とは桁が違います。定義を揃えるため、CoinGeckoのデリバティブ取引所データ(2026年9月3日)で並べると次のとおりです。
| 項目 | Arcus | Hyperliquid | Lighter | Ondo Perps |
|---|---|---|---|---|
| 24時間出来高 | 約6,730万ドル | 約72億5,000万ドル | 約10億6,900万ドル | 約1億2,700万ドル |
| 建玉 | 約2,930万ドル | 約139億4,000万ドル | 約10億4,300万ドル | 約9,280万ドル |
| 上場ペア数 | 58 | 399 | 208 | 58 |
Hyperliquidとは出来高で100倍以上、Lighterとも15倍以上の開きがあります。ペア数だけならOndo Perpsと並びますが、こちらも株式系の先物を扱う競合です。株式トークンの現物ではトークン化株式のxStocksが先行していますが、両者の板の厚みを同じ定義で比べられる公開データはありません。
つまり、いまのArcusは「株の現物が育ち始めた取引所」であって、「株をレバレッジで動かす場所」にはまだなっていません。2026年8月に加わったpTokens(無期限先物の口座をERC-20トークンにして持てる仕組み)も、5本合わせた預かり資産は2026年9月3日時点で約39万ドルにとどまります。
しかも現在の出来高は、テイカー半額・メイカー無料という期間限定の料率と、出来高が順番待ちの順位に反映される設計に支えられています。標準料率へ戻った後も同じ水準が続くかどうかを示すデータは、まだありません。現物には実需が付き始めた一方、先物の取引の場としてはまだ薄い、というのがいまのArcusです。
手数料・報酬と、触る前に確認すべき危険性
無期限先物の手数料はいまベータ限定の半額です。日本からのアクセスは遮断されていませんが、それは適法性の保証ではありません。
無期限先物の手数料はベータ限定の半額です
無期限先物のテイカー手数料は0.0225%です。ただしこれはベータ期間限定の半額で、標準料率は0.045%です。メイカーはベータ中、下位5段が無料です。
手数料のティアは直近30日の出来高で7段階に分かれますが、最下段の上限は30日で500万ドルです。ほとんどの人は最下段のまま使うことになります。
いま参加できる報酬は3つ、すべてArcus自社です
いずれも配布元はArcus自身で、第三者のトークンをもらうエアドロップではありません。
| プログラム | もらえるもの | 条件・期限 |
|---|---|---|
| 紹介プログラム(Arcus自社) | 紹介された人が払う取引手数料の10%をUSDGで受け取る。2段目は3%、3段目は2% | 対象地域のアカウントなら誰でも・期限の定めなし。出来高ゲートが有効な間は、紹介される側の直近30日の出来高が既定で100万ドル未満であることが条件 |
| 出来高連動の手数料ティア(Arcus自社) | 無期限先物の手数料が下がる。上位2段はメイカー手数料がマイナスに転じる | 直近30日の出来高で自動判定。期限の定めなし |
| 無期限先物の順番待ちランキング(Arcus自社) | ベータへの早期アクセス。トークンやポイントの付与は公表されていない | Xアカウントとウォレットを接続して順番待ちに登録。受理から1週間以内に有効化しないと枠が次の人へ回る |
公式ドキュメントは、表示される紹介歩合が割戻し・丸め・上限を反映する前の数字だと断っています。そのまま受け取れる保証はありません。ポイント制度そのものは存在せず、アプリの報酬画面は自分の取引実績と紹介の2つのタブだけです。
日本からアクセスできますが、適法性の保証ではありません
公式アプリが参照する地域判定APIを東京から呼び出すと、現物・無期限先物とも日本には制限が掛かっていない、という応答が返ります(2026年9月3日時点)。
利用規約の第8条が名指しで制限しているのは米国・英国・カナダで、日本は列挙されていません。ただし同じ条文には「自分の法域で適法かどうかを判断する責任は利用者にある」とも書かれています。
Arcusは日本の登録業者ではありません。アプリが遮断していないことと、日本で適法であることは別の話です。
資産の請求先はArcusではありません
株式トークンの請求先は、Arcusではなく発行体のBitstampです。日本の証券会社のような分別管理や投資者保護基金の仕組みは働きません。
発行体に万一のことがあったとき、手元のトークンがどう扱われるかは証券口座とは別の枠組みで決まります。税務上の扱いも、国内の証券口座ほど確立していません。
分離マージンがなく、担保はUSDG一択です
無期限先物のマージンはクロスマージンだけです。公式ドキュメントは「ローンチ時点ではクロスマージンで、分離マージンは今後の予定」と書いています。
2026年8月27日のメインネット更新履歴にも「本番環境ではアカウント単位の分離マージンは有効になっていない」と明記されています。APIには項目が用意されているのに機能しないため、1銘柄で出た損失が口座全体に及びます。
担保もPaxosが発行するUSDG一択で、BTCやETHを証拠金に使う機能はまだ予定の段階です。
いまの条件は期間限定です
手数料のベータ割引が終われば、テイカー側の負担は倍の水準へ戻ります。閉場中は証拠金が重くなり、価格バンドのせいで指値が通らない時間帯もあります。
公式自身も「とくにレバレッジ利用時は損失のおそれがある」「投資助言ではない」とサイト共通の注記で断っています。
始め方|まず現物を少額で触る
現物は順番待ちが要らないので、対象地域からなら今日から触れます。
- 対象地域を確かめます。米国・英国・カナダからは使えません。日本からは2026年9月3日時点でアプリの遮断が掛かっていませんが、適法かどうかの判断は自己責任です。
- Arcus公式サイトでウォレットを接続します。メールやソーシャルログインからでも口座を作れます。
- 入金します。他チェーンの暗号資産、取引所の残高、Apple Payやカードから入れられ、自動でUSDGに変わります。Arcus側は入金手数料を取りません。
- Discover画面で銘柄を選びます。「24h Arcus Vol.」がArcus上の出来高で、隣の「24h Total Vol.」は原資産の市場全体の出来高です。取り違えないでください。
- 現物を少額で1回買います。署名する前に、提示レートと想定スリッページの設定を必ず確かめてください。
- 無期限先物を使いたい場合は、順番待ちの登録ページでXアカウントとウォレットを接続して登録します。順位は他の取引所での過去の先物出来高、Arcus上の現物出来高、紹介の3つで決まります。受理から1週間以内に有効化しないと、枠は次の人へ回ります。
画像:Arcusアプリ(Perps)のスクリーンショット(2026年9月3日撮影)
まとめ
Arcusでは2026年9月3日時点で、株式トークンの現物に30日で50万件を超える約定が積み上がっています。売買の場としての実需は立ち上がっています。一方、無期限先物はいまも暗号資産の銘柄が中心で、看板の株式先物は薄く、手数料もベータ限定の値のままです。
カテゴリ別の出来高は公式APIで誰でも確認できるので、標準料率に戻った後に株式の比率が上がるかどうかを見ておくと、判断の材料が増えます。
出典
- dYdX公式ブログ(2026年)
- Arcus公式ドキュメント・株式トークンの概要(2026年)
- Arcus公式ドキュメント・RWA無期限先物(2026年)
- Arcus公式ドキュメント・マージン(2026年)
- Arcus公式ドキュメント・入金と担保(2026年)
- Arcus公式ドキュメント・更新履歴(2026年)
- Arcus利用規約(2026年)
- Arcus公式ブログ・順番待ちの仕組み(2026年)
- Arcus公式API・市場一覧(2026年)
- Arcus公式API・手数料ティア(2026年)
- Arcus公式インデクサ・現物出来高(2026年)
- CoinGecko・デリバティブ取引所(2026年)
免責事項
- ・本記事は情報提供のために作成されたものであり、暗号資産や証券その他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的で使用されたり、あるいはそうした取引の勧誘とみなされたり、証券その他の金融商品に関する助言や推奨を構成したりすべきものではありません。
- ・本記事に掲載された情報や意見は、当社が信頼できると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性、完全性、目的適合性、最新性、真実性等を保証するものではありません。
- ・本記事上に掲載又は記載された一切の情報に起因し又は関連して生じた損害又は損失について、当社、筆者、その他の全ての関係者は一切の責任を負いません。暗号資産にはハッキングやその他リスクが伴いますので、ご自身で十分な調査を行った上でのご利用を推奨します。
この記事を監修した人

新井 進悟
株式会社ロクブンノニ 代表取締役
2013年に東京理科大学大学院(経営工学専攻)修了後、Web・アプリ・広告業界の複数社でエンジニア、データサイエンティスト/データアナリストとして従事。2017年頃から仮想通貨・ブロックチェーン領域に携わり、2018年1月に株式会社ロクブンノニを設立、同年2月にブロックチェーン特化型メディア「Crypto Times」をローンチ。業界歴は約9年。DeFi・L1/L2プロトコル・トークノミクス・ZKP・国内外の規制動向を専門領域とし、自身でもオンチェーンでの資産運用・リサーチを日常的に行う。数百本以上の記事執筆・監修を担当し、国内外カンファレンス登壇、DeFi資産運用セミナー講師、KOLアンバサダープログラム運営など実績多数。



